産土(うぶすな)プロジェクトは、独自のテーマと切り口で、主に農山村の「限界」と呼ばれている集落の内側を、取材していく映像プロジェクトです。


徳島県神山町在住の映像作家・長岡参をプロジェクトリーダーとして、これまでさまざまな外国人映像作家らとともに取材してきました。


スタートしたきっかけは、徳島県神山町にあるNPO法人グリーンバレーと、トノループ・ネットワークス代表トム・ヴィンセント、そして長岡参が共同で企画した事業「森と共に生きる暮らし方探訪キャラバン」が、2012年度の「愛・地球博成果継承発展事業」として助成を受けたことでした。


2014年度で、活動を開始してから3年目となります。これまで取材してきた内容は、『産土』『産土 —壊—』という作品としてまとめられ、今まで世界のあちこちで多くの人に鑑賞され、共感と支持とを集めています。

2012年度キャラバン イントロダクション

産土プロジェクトに関するご質問・お問い合わせは   info@ubusuna-project.com

▼「産土」という名前について


「森と人の暮らし」というテーマで日本を駆け回った1年目は、山形の山伏やマタギ、島根県の有機農業、徳島の林業、長野・山梨の限界集落、そして沖縄の離島を取材しました。


内容が多岐に渡り、どうやってこれらをまとめようかと逡巡を重ねていたとき、ふと思いついたのが「産土」という言葉でした。


「産土」とは、土地そのものであったり、その土地の神のことを指す言葉です。人が産まれてから死んでいくまで、その人のことを守り続けると信じられてきたといいます。


外国人作家らとともに旅していくことで、自然と何かに手を合わせたり、頭を下げたりする、日本人の行為や習慣こそが、自分たちの特徴であり、またよりどころではないかと思うようになりました。


乱開発や環境破壊などを繰り返す一方で、一本の草木のために祈る文化がある。当たり前なこと過ぎて、ことさら特筆すべきものではなかったかもしれませんが、そういうものが失われつつある現在、少しでも形に残したいと思ったのです。


ただし、ただ古いものをセンチメンタルに希求し、いたずらに礼賛したり棒読み的に表現するのではなく、今の感性と技術で表現するべきだと信じています。


事業としての正式名称は「森と共に生きる暮らし方探訪キャラバン」ですが、映画との関連や親しみやすさ、そして自分たちの方向性を現す言葉としてわかりやすいことから、「産土プロジェクト」と名前を変え、活動を行っております。


▼ロゴマークについて


ベースとなるものは、愛媛県今治市大三島町にある大山祇神社の社紋や、村上水軍にまつわる家の家紋になっている「縮み三文字」です。本来の家紋的な意味というよりも、さまざまなレイヤーの上に現在があることを表現するため、ロゴとして採用しました。


社紋では三の周囲に折敷(供え物を捧げる器)がデザインされていますが、神と人を結ぶという意味があることからも、産土という名前に相応しいと考えました。


▼今後の展望


助成事業としては2014年度が最終年度となりますが、これからもあちこちの集落や魅力的な地域の人々の顔と声、仕事を伝えていきたいと思っています。このサイトを作った理由も、この活動をさらに広く展開したいという想いからでした。


このサイトでは、膨大な量のインタビューを読みやすくテキスト化し、写真や映像も交えた記事として掲載します。また撮影地の情報や取材日記、映画には収められなかった未公開・未発表の取材記事・映像なども多く発表します。内容を深めるための対談やコラムも定期的に連載し、広く社会に問いかけていく予定です。


わたしたちのアイデアリストの中には、これから行きたいところ、取材したい内容で溢れています。農山村から離れて漁村に赴くのもいいかもしれないし、農業をもっと追ってみたいし、獣害というテーマをもっと周知するものも作りたい。老人たちの中にある微かなものを追うのもいいけれど、若者たちの新しい気配を追ってもみたいとも思っています。


どうやってこのプロジェクトを続けていくのか、正直模索しながらではありますが、今の時代にしかできない表現と内容で、これからの未来の人々にとって、必要不可欠となるような「なにものか」を作ることができたらばと、切に思っています。


STAFF

長岡参(マイル)

監督/映像作家

出身国:日本

千葉県出身。2012年から神山町在住の映像作家。フリーランスとして活動後、長岡活動寫眞社を立ち上げる。映画『産土』『産土 —壊—』監督。企画から編集まで担当する。
(参加キャラバン:全キャラバン)

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荒川あゆみ

プロデューサー

出身国:日本

長野県塩尻市出身。1年のアメリカ留学を経て、高校卒業まで地元で過ごす。東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程を修了後、大手広告代理店に勤務。2014年8月に娘を出産・子育て中。

ルーファス・ウォード

アーティスト

出身国:イギリス

アートスクールを卒業後、神山に移住。英会話講師をしながら、さまざまなジャンルで作品を発表している。
(参加キャラバン:『産土』長野県・山梨県/『産土—壊—』静岡県・福島県)

ベン・ラッフェル

映像作家/撮影監督

出身国:ニュージーランド

ニュージーランドを代表する撮影監督。『産土』の山伏編を『UKETAMAU』という作品としてまとめ、多くの映画祭などに出品した。
(参加キャラバン:『産土』山形県/『産土—壊—』東京都・千葉県)

ジョン・チョー

映像作家

出身国:マレーシア

マレーシアを代表する若手映像作家。『The Apprentice』が2012 ショートショート映画祭アジアにて上映。その他受賞多数。
(参加キャラバン:『産土』島根県)

キルスティン・タン

映像作家/カメラマン

出身国:シンガポール

シンガポールを代表する若手映像作家。40以上の映画祭でノミネートされ、数々の国際映画際で受賞した経歴を持つ。現在ニューヨークにてコマーシャルなどを中心に活躍している。
(参加キャラバン:『産土』沖縄県)

マヌス・スウィーニー

カメラマン/エディター

出身国:アイルランド

アムステルダムを拠点にフリーランスカメラマン、エディターとして活動。
(参加キャラバン:『産土—壊—』福井県)

トム・ヴィンセント

プロデューサー

出身国:イギリス

1967年ロンドン生まれ。1996年に来日し、株式会社イメージソースの役員兼クリエイティブディレクターなどを経て、2005~08年バイリンガルオンラインマガジン「PingMag」を手がける。2009年に株式会社トノループネットワークスを設立。さまざまな企業のウェブや映像の仕事を手がける一方、多くの地域のプロジェクトに参加している。

なにかを放ったらかしにしてしまっては、すぐにその記憶は消えてしまいます。あちらこちらに赴いていたはずの当プロジェクトの歩みでさえ、瞬く間にあやふやになってきて、すぐになにもなかったもののようになってしまいます。


本来はだれかに見せるべきものたちが、箪笥の肥やしになってしまうという危機感のようなものがありました。いくつかのバックアップがなにかの拍子で飛んでしまったら、もはや取り戻せないかもしれない。ぼくはそれがイヤでした。


せめて助成事業として活動した2年間の内容だけでも、そのほとんどを社会と世間に解放すべきだと考え、試行錯誤を重ねながらこのサイトを作りました。


「けっこう先の未来に、ちょっとでもなにかの役に立てれば」という獏とした、ある種、祈りのような気持ちがなければ、続けられませんでした。諦めたくはないというか、意地のようなものです。


これまでじつに多くの偉大な先人たちが、さまざまにこの国を調べ、歩き、撮影してきました。しかし、この2010年代の今、紙魚が出てきそうな、図書館の古めかしく重々しい本の中ではなく、ただのヒヨッコかもしれない若者世代を代表して、できることもあるんじゃないかと考えているわけです。ただ古いものをなぞるのではなく、新しいことがしたいのです。


ぼくらの思い違い、考え違い、種々の不足に対して、ぜひ突っ込みを入れてもらえたらと思います。そして、みなさんの産土の話を聴かせてもらえたらとも思っています。ぼくはたぶん、それが一番知りたいのです。


このサイトが、みなさんのなにかに役立てることができたらと、切に願っています。


産土プロジェクト 長岡 参