【第1回】徳島県木頭村キャラバン

キャラバン
2015.02.21

2パーセントの世界

はじめてのキャラバン撮影地は、ぼくらの住む徳島県内に赴いた。

木馬(きんま)」や、「一本乗り」などの古い林業を経験されている方々が多数いるということ、そして現在の林業の姿を実際に見聞したいと思ったことが、この地へと向わせた動機である。

2パーセントとタイトルに書いたが、何がかというと、木頭村で人が住める土地面積のことで、残り約98パーセントは森林に覆われているというような、とてつもなく山深いところである。

山で働いてきた古老たちに、昔の山の風景とはどんなふうであり、なぜ今はこうした杉林となってしまったのかを訊ねてみたかった。

那賀町の中心部を通ってさらに1時間以上、那賀川と平行するように蛇行しながら車を走らせると、突如集落が現れ、木頭村の中心地である支所のあたりに到着する。ぼくの住む神山からでも、ゆうに2時間半程度はかかる距離だ。同じ「県内」といっても、はるか遠くまで来たような気がする。

その道は、かつて「地獄街道」と称されたほどの危険な場所だったのだと、ある人が教えてくれた。なんでも材木を積んだダンプカーの半分は道からはみ出ていて、運転手はドアを空けたまま、いつでも飛び降りれるようにしていたと……。

今でこそキレイに舗装された道を通ることが可能だが、かつてはそんな険しい道でしか外に出る手段はなかったということだ。またそういう場所であったがために、一世代前までは一生そこから出ない人も多くいたようだ。

出ることがむずかしいのなら、来ることもまたむずかしい。外部からの影響をあまり受けなかったためか、ある種の「文化的ビオトープ」とも言うべき、種々の伝統がいまだに残っている。

またほとんどが森と言っていいような場所であるからこそ、古くから林業が隆盛し、山での仕事や生活に関するさまざまな知見が、今に至るまで残っているのである。過疎化や高齢化という問題はご多分にもれず数々あるのだろうが、それでも古いものをなんとか保存させようとしたり、受継ごうとする動きもそこにはあった。

取材させていただいた方々は、休むということを知らないほど、次から次にいろいろな仕事をこなしていくのが印象的だった。山とともに生き、働いてきた人々の声を聞いていただければと思う。

長岡参

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ロケ地

徳島県那賀郡那賀町木頭村(なかぐんなかちょうきとうそん)

取材内容

・林業の歴史と現在
・工芸品や伝統の保存活動
・山での生活
・Iターン者の声

キャラバン隊員

・ジャン・フィリップ・マルタン
・長岡参
・堀川ジュリアン健太
・川口泰吾

Jean Philippe Martin ジャン・フィリップ・マルタン
フランス出身。取材当時、早稲田大学で現代演劇を学んでいた。過去に長岡の映像プロジェクトを手伝っていたことが縁でキャラバン隊に加わることに。

主な訪問地

NGO おららの炭小屋
〒771‐6512
徳島県那賀郡那賀町木頭北川船谷
TEL:050‐8800‐7240
https://ja-jp.facebook.com/olalakito
炭焼きを再現し、技術を伝承するための小屋

生きがい工房「太布庵」(阿波太布製造技法保存伝承会)
〒771‐6403
徳島県那賀郡那賀町木頭和無田字イワツシ1
TEL:0884‐68‐2386
「太布」づくりの工房

KEN’s(ケンズ)ギャラリーカフェ
〒771‐6402
徳島県那賀郡那賀町木頭出原2
TEL:050‐8800‐6103
ギャラリー兼喫茶店

御朱印谷山
那賀町にある標高1,218メートルの山。(緯度33・443084/経度134・055052)
2・5万地形図名「赤城尾山」

那賀川
徳島県で最も長い川。一級河川。

ご出演いただいた方々

林業家
山の達人 大城慶太郎(おおしろけいたろう)さん
山の生き字引の92歳 野口菊秋(のぐちきくあき)さん
山仕事をして66年 竹岡章(たけおかあきら)さん
都市部からのIターン者 田中祥太(たなかよしたか)さん
元林業家・一本乗り名人 上本好夫(うえもとよしお)さん
岡脇文吾(おかわきぶんご)さん
前浦義美(まえうらよしみ)さん

喫茶店経営
Ken’s ギャラリーカフェ 中野みね子さん

一本乗り保存会
一本乗りを伝える外国人 マーク・フェネリーさん

太布保存会会長
太布保存会会長 大沢善和(おおさわよしかず)さん

撮影スケジュール

2012年7月8日〈撮影1日目〉
 8:30〜 炭焼きワークショップに参加・撮影(おららの炭小屋)
10:30〜 炭材入れ、窯の中に原木を並べて入れる作業撮影
11:30〜 火入れ、次回のための原木割り作業
12:40〜 参加者インタビューなど
14:00〜 網にかかっていた死んでいた鹿の搬入後、鹿の解体
18:00〜 宴(アメゴ、鹿肉、新ジャガなどの料理)地元の方々と懇親会

2012年7月9日〈撮影2日目〉
 8:30〜 岡脇文吾さんによる山案内・撮影
 9:00〜 上本好夫さんインタビュー(山の出小屋)
 9:30〜 上本好夫さん・岡脇文吾さんと下草刈り撮影
11:00〜 索道(さくどう)等作業風景撮影
12:30〜 昼食(索道現場)・周辺撮影
15:00〜 野口菊秋さんインタビュー

2012年7月10日〈撮影3日目〉
 9:30〜 働く女性たちを撮影(木頭村生きがい工房)
11:30〜 大沢善和さん(太布保存会会長)インタビュー
15:30〜 大城慶太郎さんインタビュー(ご自宅縁側)
17:00〜 景観その他撮影

2012年7月11日〈撮影4日目〉
12:00〜 土砂崩れによる通行止め風景撮影(四ツ足峠トンネル)
17:00〜 前浦義美さん・田中祥太さんインタビュー

2012年7月13日〈撮影5日目〉
 9:30〜 上野良夫さん・井村さんと出原谷の鉄砲堰撮影
10:30〜 上野良夫さん・井村さんインタビュー
14:00〜 とっちんちん撮影(蝉谷神社)
15:00〜 竹岡章さんインタビュー
16:00〜 家の周り、風景撮影

2012年7月14日〈撮影6日目〉
11:00〜 中野みね子さんインタビュー(Ken’s ギャラリーカフェ)

2012年7月15日〈撮影7日目〉
10:00〜 一本乗り講習会、マーク・フェネリーさんインタビュー
13:30〜 風景撮影

ロケ地情報

徳島県那賀郡那賀町木頭村

面積:233.44平方キロメートル(徳島県内占有率 5・6%)
森林面積:228.54平方キロメートル(97・9%)
人口:約1,800人(平成16年時点)

特長:木頭村は徳島県と高知県との県境に位置し、約98%が森林、人が住める場所が約2%という場所である。隣県にある馬路村(うまじむら)に匹敵するほどユズの栽培が盛んだった。県内最多の降雨量を誇り、瞬間降雨量では日本一になることもあった多雨地帯であるため、杉の成長が早く、木頭杉は全国的にも有名。

歴史:1889年(明治22年)に海部郡木頭村(かいふぐんきとうそん)として成立。1951年(昭和26年)に海部郡から那賀郡に所属が変更。2005年(平成17年)那賀郡の3町2村による合併後、那賀町の一部となる。

スクリプト協力

稲垣恵 浦山一世 川口鑑子 川口泰吾 河本雅美 原田真由美

執筆者

長岡参
長岡参
千葉県出身、2012年から神山町在住の映像作家。長岡活動寫眞を立ち上げる。『産土』『産土 壞』の監督、企画、編集まで担当する。