【第2回】長野県遠山郷キャラバン

キャラバン
2015.02.21

遠いニギワイ

映画『産土』のオープニングに登場する、霧に覆われた深い山の光景は、長野県遠山郷は下栗にある「天空の里ビューポイント」という見晴らしスポットから撮られたものである。

この地に赴こうとしたのは、参考図書として偶然みつけた一冊の本、野本寛一著『地霊の復権』(岩波書店)の中に出てくる一枚の写真に目が釘付けになったからであった。そこには南信濃のかなりの標高の高いところにある開拓村の寂れた神社が写っており、その周辺の廃村に至った集落の姿が描写されていた。

人が住んでいたから集団的に出て行ってしまうこと、すなわち「廃村」というものの実態を知りたいと想い、遠山郷にまで足を伸ばした。

遠山郷とは昔の呼び方、またはその地の通称的呼称で、行政区分的には飯田市の南信濃村、上村の二つにまたがる一帯である。この地には以前は森林鉄道が通っており(以下歴史で詳述)、そのときは人口も多く活気に満ちていたともいうが、現在はやはり、過疎化に歯止めがかかってはいない。

下栗に撮影に赴くと、不思議にちょうど祭が行われていた。「掛け踊り」というその祭は、雨乞いのためとも土地の神様のためとも言われる祭だった。この地には、霜月祭という祭がある。かの『千と千尋の神隠し』の湯やのモデルとなったとも言われる有名な祭で、できればそれを撮影したかったが、今回は時期が違う。

いろいろ回ってみても、廃村に関する情報はなかなか得られなかった。だが遠山温泉で係の方に訊いてみると、詳しい人を紹介してくれた。そしてインタビューをさせてもらったのが、廃村した底稲という集落出身の、緑川実男さんである。話を終えると、緑川さんが自分の住んでいた場所に案内してくれた。そして険しい道を登って辿り着いた先には、あの写真と同じ光景がそこにあったのである。

長岡参

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ロケ地

長野県飯田市南信濃/上村(いいだしみなみしなの/かみむら)

取材内容

・廃村の実態
・祭と盆踊り
・森林鉄道

キャラバン隊員

・ルーファス・ウォード
・長岡参
・川口泰吾

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Rufus Ward ルーファス・ウォード
イギリス、エディンバラ出身。アートスクールを卒業後、神山に移住したアーティスト。さまざまなジャンルの作品を発表している。
http://furward.tumblr.com/

主な訪問地

底稲集落
長野県飯田市南信濃和田(緯度35・328151/経度137・907987)
標高:1092メートル
2・5万地形図名「上町」「伊那和田」

下栗の里
長野県飯田市上村の東面傾斜面にある標高800〜1,000mの地区。平成21年「にほんの里100選」。
http://www.shimoguri.com/

旧木沢小学校
〒399-1401
長野県飯田市南信濃木沢811
昭和7年に建てられた木造校舎地区の新たな交流拠点として活用されている。

ご出演いただいた方々

底稲出身者
底稲集落に最後まで残った一家の一人 緑川実男(みどりかわじつお)さん

遠山郷に住む方々
かぐらの湯支配人 山崎徳蔵(やまざきとくぞう)さん
遠山山の会、夢をつなごう遠山森林鉄道の会会長 前澤憲道(まえざわのりみち)さん
栄林社社長 山下好雄(やましたよしお)さん

撮影スケジュール

2012年8月13日〈移動日〉

2012年8月14日〈撮影1日目〉
11:00〜 渡邉副市長インタビュー
13:00〜 景観撮影
14:00〜 緑川実男さんインタビュー

2012年8月15日〈撮影2日目〉
 8:30〜 下栗の撮影(天空の里ビューポイント)
13:00〜 下栗の掛け踊り撮影
18:30〜 木澤の盆踊り撮影(旧木沢小学校)

2012年8月16日〈撮影3日目〉
10:00〜 森林鉄道関係者取材
13:00〜 山梨県早川町へ移動

ロケ地情報

長野県飯田市遠山郷旧底稲

〈南信濃村〉
面積:206・90平方キロメート(境界未定部分有り)
人口:約1,664人 ※平成26年時点

歴史:1960年(昭和35年)遠山村と木沢村が合併し南信濃村に。2005年(平成17年)上村、南信濃村の両村が飯田市に編入。

〈上村〉
面積:126・51平方キロメートル(境界未定部分有り)
人口:484人 ※平成26年時点

歴史:1875年(明治8年)筑摩郡(つかまぐん・ちくまぐん)4村が合併し遠山村(とおやまむら)となり、翌年長野県の所属に。1879年(明治12年)郡区町村編成法の施行により、下伊那郡(しもいなぐん)の所属になる。1881年(明治14年)遠山村の一部が分立して上村(かみむら)となる。1889年(明治22年)町村制により、上村が単独自治体になる。

特徴:遠山郷は長野県の南端、南アルプスと伊那山地に囲まれた、天竜川の支流である遠山川に沿うように広がる深い谷だ。行政区分としては、長野県飯田市南信濃と上村の一帯を指す。「信州の奥座敷」などと呼ばれ、日本秘境100選にも選ばれている。下栗の里の景観は「日本のチロル」とも呼ばれる。

遠山地方の山林は江戸時代以降、天領(国有林)として伐採が禁じられていたため豊かな自然が遺されていた。かつて遠山谷には、12,000ヘクタールの私有林、7,000ヘクタールの共有林、12,000ヘクタールの国有林があったといわれる。1895年(明治28年)に王子製紙によって共有林が買い上げられ伐採が進み、次第に荒廃していった。また1944年(昭和19年)遠山森林鉄道の開業にともない奥地国有林の伐採が始まり、木材が大量に運搬されていく中で、村は人口が増加するなどの木材景気に湧いたが、伐採が急峻な奥地に進んでいくと、自然災害などが重なり採算が悪化、昭和48年に鉄道は閉鎖された。

スクリプト協力

浦山一世 川口鑑子 野原奈津美 原田真由美

執筆者

長岡参
長岡参
千葉県出身、2012年から神山町在住の映像作家。長岡活動寫眞を立ち上げる。『産土』『産土 壞』の監督、企画、編集まで担当する。